Webアクセシビリティが義務化に
2024年4月に施行される「改正障害者差別解消法」で、全事業者を対象に義務化される部分について話題となりつつありますが、その内容はどのようなものなのでしょうか。
一部では「Webアクセシビリティが義務化される」と思われているようですが、そもそもWebアクセシビリティとは何か、義務化部分について改正法に抵触しないためにどういう対応が必要なのか、改正法の内容がどのようなものなのかご紹介します。
Webアクセシビリティとは
外務省のホームページでは、「ホームページを利用している全ての人が、心身の条件や利用する環境に関係なく、ホームページで提供されている情報や機能に支障なくアクセスし、利用できること」を意味し、外務省のウェブアクセシビリティ方針(対応目標)には、現行システムの刷新に係る予定等を踏まえ、CMSにより運用しているページ(平成26年以降に作成したCMSテンプレートで作成したページ)について、令和6年末までにJISのレベルAAに準拠することを目標とすると明記されています。
外務省ホームページ:ウェブアクセシビリティ」
デジタル庁が公開している「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」によれば、一般的に「Webアクセシビリティが担保できている」状態とは、具体的に次のような状態になることが望まれます。
- 目が見えなくても情報が伝わる・操作できること
- キーボードだけで操作できること
- 一部の色が区別できなくても情報が欠けないこと
- 音声コンテンツや動画コンテンツでは、音声が聞こえなくても何を話しているかわかること
国際規格「WCAG」とJIS規格「JIS X 8341-3:2016」
「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」とは、インターネットの各種規格を策定・勧告しているW3C(World Wide Web Consortium)が作成しているガイドラインで、2023年10月5日にWCAG 2.2 が最新のW3C勧告となりました。
WCAG2.0がISO/IECの国際規格になったことを受けて、「JIS X 8341-3:2016」が2016年に改正されました。「JIS X 8341-3:2016」とは、「高齢者・障害者等配慮設計指針:情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ」といい、Webアクセシビリティガイドラインの規格の一つです。この規格でいう「ウェブコンテンツ」は、ブラウザや支援技術などを介して利用者に提供される次のようなコンテンツが挙げられます。
- ウェブサイト
- ウェブシステム
- ウェブアプリケーション
- モバイル端末等にて提供されるコンテンツ
- イントラネット業務用システム
- 電子マニュアル
- CD-ROM 等で配布される電子文書
JIS X 8341-3:2016の適合レベル
「JIS X 8341-3:2016」には、レベル「A」「AA」「AAA」の3つのレベルの適合レベルが定められており、各レベルの各項目に沿って実装と試験を行う必要があります。
等級 | 項目数 | 主な達成基準 | 備考 |
A | 30 |
| Webアクセシビリティにおける基本的な事項。 |
AA | 13 |
| レベルAよりも細かい部分のアクセシビリティ事項。 一般的にAAの達成が求められている(国内・海外ともに) |
AAA | 23 |
| 特殊な状況でのアクセシビリティ事項。 一般的にAAA準拠を目指すことは推奨されていない。 |
障害者のインターネット利用実態
障害者のインターネット利用率
視覚障害者 | 91.7% |
聴覚障害者 | 93.4% |
肢体不自由者 | 82.7% |
知的障害者 | 46.9% |
総務省「障がいのある方々のインターネット等の利用に関する調査研究」(2012年)
全盲者(n=72)がパソコンからインターネット利用時に困ること
スクリーンリーダーで読み上げられないPDF やフォーム(お問い合わせなどの入力項目)がある | 94.4% |
画像や写真などに説明文がないため、スクリーンリーダーで読み上げられない | 86.1% |
画像認証の利用が困難もしくは利用できない(ログイン作業など、毎回違う画像上に表示された文字を入力すること) | 84.7% |
ページレイアウトや構造が複雑過ぎる、または構造化されていない | 73.6% |
情報量やリンクが多過ぎる | 59.7% |
日経BPコンサルティング「障害者のインターネット利用実態調査(視覚障害者)」(2014年)
障害者のウェブページ利用方法の紹介ビデオ
障害者差別解消法改正による義務化の内容
障害者差別解消法は2013年6月に制定され2016年4月から施行され、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的としました。
今回の法改正のポイントは、障害者差別解消法における「合理的配慮」が、事業者にも義務化されるという点です。
内閣府の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」によると、「第5 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項」において、合理的配慮を的確に行うための措置として「環境の整備」の実施に努めなければならず、その「環境整備」に「情報アクセシビリティ」が含まれています。情報アクセシビリティの中にWebアクセシビリティが含まれるため、対応が必要と言われています。
合理的配慮を的確に行うための措置としての位置づけである「環境の整備」とは、「事前的改善措置」に相当し、利用者が不便に思うような状況を作らないための事前措置ということであり、義務化されるのはあくまで「合理的配慮」の部分で、「環境の整備」は努力義務となりますので、環境の整備に含まれるWebアクセシビリティ対応を怠ったからといってすぐに法に抵触するわけではありません。
合理的配慮の具体的な改善方法としては、障碍者からの問い合わせに直ぐに対応するための電話番号の表示は必須かもしれません。
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