袖引き出しを持ち歩くという発想

リモートワーク

オフィスに自分のデスクが無い時代のワークスタイル

コクヨ ペンケース ネオクリッツ
コクヨ:ネオクリッツ(ペンケース)

●コクヨ:ネオクリッツ・ワークサス 1,800円。
色は、ネイビー、ブラック、ブラウン。立つタイプより設置面積は取るが、倒れにくく、中のものが出し入れしやすいのでビジネスにはこちらの方が向いている。

ノマドワークやフリーアドレス、更にはリモートワークといった、固定されたデスクの無いワークスタイルが、もはや当たり前のことになりつつあります。会社には固定したデスクがあっても、そこで仕事ができない状況も増え、仕事道具はまとめてカバンに入れておくものになってきました。

これまでも、ツールボックス的に、例えば、コクヨの「ネオクリッツ」のような、ペンスタンドのようにも使えるペンケースで、文房具関係をひとまとめにして、デスクと同じようなスタイルで仕事をする環境を作るというスタイルは人気で、ネオクリッツもラージサイズや大人向きに改良され、横長になった「ネオクリッツ・ワークサス」といった製品も登場。このジャンルはリモートワークの普及を受けて大ヒットし、レイメイ藤井の「デテクール」、サンスター文具の「デルデ・ペンケース」などが登場。どの製品も売れ行きを伸ばしています。

ただ、これらの製品はあくまでもペンケースであり、仕事道具をまとめて持ち歩くという訳にはいきません。そのため、リュックなどにパソコンや書類、ペンケースなどを入れて持ち歩いて、カフェなどで、道具をセッティングして仕事をするというスタイルが一般的です。「ノマドワーク バッグ」といった形で検索しても、表示されるのは、ノートパソコンが収納できてコンパクトなリュックやトートバッグがメインになっています。

そういったバッグの中に、例えばリヒトラブの「スタンドポーチ HINEMO」やキングジム「フリオ・スタンドバッグ」を入れて持ち歩くというのも一つの手です。これらは、いわばペンケースの大型判というか、一種の整理棚付きツールボックスのようなものなので、広い机で作業が可能な環境であれば、これとノートパソコン、各種ファイルだけで、会社のデスクと同じように仕事が行えて、作業効率も損ないません。小さなメーカーからは、このようなタイプのスタンドバッグにノートパソコンなども収納できるタイプを発売しているところもあります。

これらのツールケースの問題点は、まず、テーブルの上でそれなりに場所を取ってしまうこと。フリーアドレス環境やコワーキングスペースのような、十分な広さのデスクが確保されている場所でなら十分に威力を発揮するのですが、カフェや家庭などの狭いテーブルの上では、これらを置くスペースが確保できません。カバンタイプの場合、カバンを直接デスクの上に置くことに抵抗を感じる人も多いと思います。衛生事情に敏感になっている昨今では、特に気を使いたい部分でもあります。

デスク普通にあった袖引き出しを持ち歩くためのカバン

コクヨ mo・baco
コクヨ:mo・baco

●コクヨ:mo・baco 7,700円。
色はブルー、ダークグレー、グリーン、レッド。サイズは持ち手を畳んだ状態で375×125×260mm。

かつて、人気が高かった「パイロットケース」と呼ばれるスタイルのカバンは、仕事道具をまとめて手元に置きながら、必要に応じて資料などを取り出しやすいように作られたバッグです。ファイルやノートパソコンを立てて入れられるB4くらいの大きさで、上部が完全に開き、自立する、革製の大型のカバンで、これを足下に置いておけば、必要な道具にすぐにアクセスすることが出来ます。発想としては、会社のデスクに付いている引き出しを小型化して手元に置いておこうというもので、狭いコクピットの中で必要な書類をスムーズに閲覧、収納できるということで旅客機のパイロットに愛用されたカバンです。今でも多くのカバンメーカーが製造しています。それこそ、カフェなどで足下に置いて使うのにぴったりのバッグと言えます。コクヨの「mo-baco」やサンワサプライの「テレワークBOXバッグ」などは、そんなパイロットケースにヒントを得て考案された、フリーアドレス用のワークボックスと言えるでしょう。

コクヨ THIRD FIELD スタンド・バックパック
コクヨ:THIRD FIELD スタンド・バックパック

●コクヨ:THIRD FIELD スタンド・バックパック
13.3インチモデル 16,500円+税。他に16.5インチモデル(19,000円+税)もある。

コクヨ THIRD FIELD スタンド・バックパック
このように自立して、上部は手前に開く設計。袖引き出しの一番上の、仕切りのある薄い引き出しのイメージで作られている。

この「デスクの袖引き出しを持ち歩く」ことをコンセプトに作られたのが、コクヨの新しいブランド「THIRD FIELD」から発売されている「スタンド・バックパック」です。いくら、パイロットケースが便利だからといって、やはり手で持って歩くには重すぎます。かといって、ワークボックスタイプは、外で使うことがあまり考慮されていません。その点を解決すべく作られた「スタンド・バックパック」は、一言で言えば、自立するバックパックに、引きだし的な機能を持たせたものです。コクヨのスタッフが、実際にコワーキングスペースやカフェで仕事をする人々を観察する中で生まれた製品だけあって、かなり細かいところまで行き届いた製品になっています。

例えば、カフェで仕事をしている人たちの足下には、多くの場合、ビジネスリュックが置かれていることが多いのだけど、その肩ひも部分が、だらしなく床に延びていて、それが踏まれたりしている点を解決するために、ストラップの収納が付いています。こういう視点は今までのノマド用バッグには無かったものでしょう。その上で、ワンタッチでリュックを立たせるための足が現れる構造や、一番上のポケットが平たく開き、中はペンケースのような構造になっているなど、他のカバンには無い機能が備えられています。
メインの収納部は上下に分かれていて、上部は前述したようにペンケース的な、小物の収納や出し入れに特化した構造、下部には、それ以外の必要だけれど、頻繁には使わない、例えば水筒や折り畳み傘などを入れるように作られているのも、袖引き出し的な発想。さらに、背の部分にはノートパソコンやファイル類を収納するポケットを装備。カフェのテーブルの脇、自分の足下に置いて、必要なものには素早くアクセスできる、正にデスクの袖引き出しと同じような感覚で使えるカバンなのです。

オフィス家具メーカーならではのアイディアによるワークツール

コクヨ THIRD FIELD スタンドツールポーチ
コクヨ:THIRD FIELD スタンドツールポーチ

●コクヨ:HIRD FIELD スタンドツールポーチ 4,000円+税。
色は、ダークグレイ、ライトブルー、ベージュ。サイズは190×45×150mm。「スタンド・バックパック」の下部コンパートメントに収まり、サイドポケットから出し入れできるサイズになっている。

ファスナー類がほとんど直線で開閉できるようになっているので、カーブ部分で引っかかったりせず、スムーズに開閉できるのもポイント。一般のカバンメーカーは、カバンを「持ち歩くもの」として設計するので、移動中に役立つ機能が中心になるのですが、コクヨは文具・事務機器メーカーです。得意のオフィス家具を設計するような感覚で、足下に置いて使う時の機能を優先して作っているため、こういう、これまでに無い発想の製品が生まれたのだと思います。

その一方で、なるべく薄く、軽く作るなど、通勤での扱いやすさにも十分配慮されています。マチ幅をペットボトルを入れた時にちょうど良くなる程度に設定するといった具合です。そのため、女性が持ってもスッキリと見えるシルエットに仕上げられています。ただ、荷物が多い方も使えるように、サイズは2種類を用意。大きいサイズの方は、15.6インチのノートパソコンが収納可能で、マチ幅もレンズ交換式のデジカメが収納できるほどの大きさがあります。

この「スタンド・バックパック」を含む、コクヨの「THIRD FIELD」というブランドは、ノマドワークやリモートワーク全体を支援するブランドとして立ち上げられたもので、例えば、デスク上で使う筆記具や充電ケーブルなどをまとめて収納し、使用時はデスクの上に立てて置ける「スタンドツールポーチ」や、書類を自立させて立てておける「スタンドドキュメントバッグ」なども用意されていて、これらのサイズが、「スタンド・バックパック」のポケットにぴったり入るように設計されています。バッグを中心に、自分に必要な環境に合わせて、必要なツールを組み合わせて使うことができる、一種の、「持ち歩けるオフィス家具」になっているわけです。こういう仕事環境の構築方法もある、ということは頭に入れておくと、仕事の幅も広がるのではないでしょうか。

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